はじめに
商品貨幣論、と言う言説がある。
僕は浅学非才の身であり、この手の論の真偽であるだとか、正しい理解というモノは残念ながら持っていない。
あくまでも「話のネタ」としてこれを例に出すと心得て欲しい。
商品貨幣論とは
まず商品貨幣論について大雑把に説明させて貰おう。
原始社会における経済活動では物々交換が主流であり、人々の文明が発展し活動が大きくなると共に物々交換だけでは不便が発生し始める。
そこで経済活動をより円滑にするため、何らかの商品(金を始めとする貴金属等多数の人々が必要とするモノ)が共通の貨幣として使われるようになった。
しかし貴金属そのままでは取引に難があるため、これらを権力者が「金貨」や「銀貨」として加工して運用するようになり、やがて金と交換することを義務付けた兌換紙幣へと変化する。
そしてこれらは最終的には金と交換する必要が無い不換紙幣となったとしても、我々がそれを使い続ける限り貨幣としての価値を持つ……と言う形で現代における貨幣の成り立ちを説明した論である。
これそのものは学生時代など何らかの場に目にしたという人も多く、また説得力がある言説になるほどと思った人も多いと思うのだが、実はこの「商品貨幣論」という論そのものには綻びが指摘されていたりする。
例えば商品貨幣論では不換紙幣についての説明が曖昧であったりだとか、そもそも「原始社会は物々交換が行われていた」という大前提が、多くの人間学者によって否定されていたりするといった視点からだ。
そのため昨今では信用貨幣論、国定信用貨幣論、MMT(現代貨幣理論)等、商品貨幣論ではない言説が勢いを増しており、商品貨幣論からくるインフレへの忌避感が不況をも招いているとして、それが批判の対象となることもあるらしいのだが…… 閑話休題。
皆忘れがちだがここはポケモンのファンサイトである。
政治や経済の話をする場ではないので話を進めよう。
商品貨幣論と相性補完の類似点
僕はこの手の議論を眺めている時にふと思い立ったのである。
「相性補完」って「商品貨幣論」と似ているんじゃないか……と。
ああ、勿論似ていると言っても政治や経済などに関わる難しい話ではない。
- 何らかの場で目にする機会が多い
- それなりに説得力がある
- 前提からして違う可能性がある
そして何らかの事象への「忌避感」へと繋がると言う点だ。
今回指摘する忌避感とはポケモン対戦においては「相性補完がなされていないパーティ(見た目上のタイプバランスへの悪さについて)」の忌避感だ。
またこの論に置いては「相性補完」という概念について私が誤りではないだろうか?と疑問を提示するだけであり、これをもって「相性補完」が誤りであると断定するものではない。
商品貨幣論等の経済に関連する様々な言説もまだまだ結論が出ておらず、何が正しいのかは数十年たたなければ分からないというのと同様に、「相性補完」と言う既存の構築論と、これから僕の主張する構築論のどちらが正しいのか?
というモノは何年か、あるいは何十年かたってみなければ分からない。
これはあくまでも「話のネタ」にすぎないのだから。
相性補完とは何か
しかし今回はこれを奇貨として、ポケモンのパーティ構築に置ける「相性補完」とは何なのかについて、1から考え直しつつ語っていこうと思う。
まず初めに行うのは「パーティ構築の方法」の再確認である。
- 「炎タイプのポケモンを使いたい時は、相性の悪い水タイプのポケモンに強い草タイプも同時に採用する」
- 「草タイプのポケモンは飛行タイプに弱いので、飛行タイプに強い電気タイプを採用する」
これを繰り返すことは隙の無いパーティを組み上げていく。
というモノがポケモン対戦におけるパーティ構築の方法であり、「炎を使うには水に強い草を採用する」という「タイプに対して行う」行為が「相性補完」であるとされている。
なるほど確かにこれは極めて説得力がある言説であり、単純にポケモンを選べばよいだけではない、ポケモン対戦の奥深さを表しているようにも思えるが……。
相性補完の誤り
冷静に考えるとこれは誤りであるように僕は思う。
この「相性補完」を行った結果としてよく語られるのが、最初に決めた「使いたいポケモン(この場合は炎タイプのポケモン)」が抜けて完成……と言うオチなのだが、「相性補完」と言う考え方が正しいのであればあれば、冷静に考えると相性補完を何度もされることになる最初のポケモンが抜けるという事象は考えにくい。
最初のポケモンが抜けるという事は、次に入ったポケモンが最初のポケモンを補完している以上、補完すべき対象がいなくなってしまうため、そいつもまたパーティから抜けてしまうのは明らかだ。
それなのに何故最初のポケモンが抜けてしまうのかと考えると……
タイプと言う要素を重視する「相性補完」と言う考え方そのものが誤りだからである。
と、僕は主張する。
事実として僕はパーティ構築時に一般的に語られる「相性補完」を意識することは無いし、「相性補完」が本当に重要なのであれば「雨パーティ」や「砂パーティ」と言った天候パーティは発生するはずが無い。
例えばバンギラスとドリュウズの砂パはともに格闘タイプのポケモンに弱点を突かれてしまうわけで、「相性補完」により格闘タイプに強いポケモンを採用したとしても、砂パに対して格闘タイプ側は「1度だけ多く相性補完が可能」となる。
すると必然的に「相性補完」を多く行った格闘タイプ側のパーティの完成度が高くなり、構築相性で有利となるはずだが……実際にそんなことは起こっているとは言えない。
バンギラス+ドリュウズに代表される砂パーティや、雨パーティと呼ばれる構築ジャンルは、ポケモン対戦の歴史でも燦然と輝きを放っており、相性補完を多く行っているはずのパーティに劣らない実績を持っている。
先に述べたように「タイプ相性の悪さ」について忌避感を抱き、否定的となる人(あるいは使用を避ける人)が多いのにもかかわらず、である。
タイプのバランスに優れたパーティ
これはポケモン対戦においてタイプと言う要素を重視する「相性補完」が誤りであるということを、僕の主張を補強しているように思う。
だがこれは同時に「タイプのバランスに優れたパーティ」を否定するものではない。
「特定のタイプで統一されたパーティよりも、様々なタイプが組み込まれたパーティの方が、タイプ相性で有利な盤面を作りやすいため、強い構築になりやすい」と言う考え方はもっともである。
こういうとじゃあ何が言いたいのか?と考えると思われるため、僕の結論を端的に示すと
「相性補完に優れたパーティ」と「タイプのバランスに優れたパーティ」は似て非なるものだ、という事である。
これ似て非なるものであるということは中々文章で書いても伝わらないと思うため、以下の図をもって結論としてほしい。
ポケモンに対して行う「補完」
では次はこの結論に至る理由を説明しよう。
ここまでの論に置いて一般的に語られる上記図にあるような直線的な構築となる「相性補完」が誤りであると僕は主張しているわけだが、具体的に何がどう誤っているのかと言うと、ポケモン対戦に置ける構築とは相性補完のように「タイプに対して」にするべきものではなく、「ポケモンに対して」するべきということである。
「相性補完」と言う美辞麗句に騙され直線的な「見た目の美しさ」に騙されてしまうと、
「相性補完」だけしかできておらず、倒さなくてはならない「ポケモンに対して」の対策がおろそかになってしまう。
「相性補完はされているが、倒すべきポケモンを倒せない」ポケモンがパーティ内に増えてしまうため、
最初に入ったポケモンがその歪みの影響を受け、抜けてしまうと言った事象が発生する。
これはポケモン対戦の強者と呼ばれる人たちにとっては(無意識レベルであっても)当たり前のことだと思うのだが、実際の所多くのポケモントレーナーにとっては共通認識となっていない。
例えば先に述べたバンギラスとドリュウズは格闘タイプのポケモンに弱いわけだが、ここで何を採用して対策をするのか?と考えてみよう。
恐らく多くのポケモントレーナーは「エスパータイプ」や「ひこうタイプ」のポケモンをイメージしたと思うのだが、これがタイプに対して「相性補完」を行っているが故の罠である。
ここで重要なのは「タイプ相性」では無い。
あくまでも一例になるが、ここで採用するポケモンは「ロトム」や「ウインディ」でも良いのである。
何故ならばこのポケモンたちは「おにび」を使って物理攻撃を半減することができるため、
物理攻撃を主体とする「かくとうタイプ」のポケモンたちに強くなっている。
恐らくこういうことを書くと、じゃあ特殊型の格闘タイプはどうするんだよ!とタイプ相性の悪さに忌避感を覚える人も多いと思うのだが、エスパータイプ対策であくタイプの技が飛んで来たらどうするんだ!ひこうタイプ対策のいわタイプの技が飛んで来たらどうするんだ!
と言うのと本質的には変わりない。
重要なのは「強いパーティ」を組み上げることなのである。
そのためには様々な思考を取り入れて、直線的ではない構築を組むことが重要となる。
強いパーティへのアプローチ
強いパーティを組み上げるためのアプローチとして「相性補完」を行いエスパータイプやひこうタイプを採用するというのは「タイプ」に焦点を合わせた対策をする。
一方で僕の説ではおにびを採用したロトムやウインディは「物理」に焦点を合わせた対策を行う
そう。タイプに焦点と合わせた場合では、特定のタイプしか対策できないが、ロトムやウインディは鬼火を用いて「物理」に焦点を合わせることで格闘タイプ以外の物理型を見ることができるのだ。
そして何よりも「バンギラス+ドリュウズを対策するのは格闘タイプだけではない」のである。
ここでバンギラス+ドリュウズを対策するポケモンたちを思い出してみよう。
この2匹共通の弱点として「地面・格闘・水」の3タイプが存在するわけだが、「ひこう」と「エスパー」はこのうち「格闘タイプ」にしか勝つことができない。
何らかの手段で攻撃力を強化された水タイプに、後発の「ひこう」や「エスパー」が吹っ飛ばされてしまい、格闘タイプ以前の問題としてパーティが崩壊してしまう。と言った事象はこのような場面で多く発生する。
この問題を解決するためには「格闘タイプ」以外の対策には別のタイプを準備する必要がでてきてしまい、選出を著しく圧迫することでパーティ内の歪みがさらに増大し、「最初に入ったポケモンが抜ける」と言う状況に陥ってしまうわけだ。
一方でロトムやウインディを採用した場合はどうなるだろうか?
そう。バンギラスとドリュウズと同じように水や地面に弱点を突かれるウインディならば、「相性補完」と同じ問題が発生するだろう。
しかしロトムの場合は鬼火で格闘を見据えながら、水タイプには電気技で有利を取り、さらに地面タイプも特性の浮遊で相手が可能となる。
故にバンギラス+ドリュウズと言う構築には「かくとうタイプ」への対策として「おにび」を採用したロトムが採用するとよく活躍をしてくれる。
そしてこれは「相性補完」のような直線的ではない、違う視点から見ているからこそ起こる事象だ。
採用理由と実際の運用
上記の例の続きだが、バンギドリュウズと同じく水や地面に弱点を突かれるという理由でウインディを採用しないのならば、単純にロトムは水タイプに対する「相性補完」として入るのではないか?と思われた人も多いと思う。
しかし「相性補完」として入った場合、ロトムに対して積極的に「おにび」を採用することは無いだろう。
何故ならば「水タイプ」を強く意識してパーティを編成した場合、「ギャラドス」等を倒す必要がある。
しかしギャラドスは「パワーウィップ」を覚えるため、ロトムで後出しから安全に倒すためには「こだわりスカーフ」を優先して持たせる必要がある。
と言うか水タイプを意識した場合、これを意識しなければ「電気タイプを採用した意味」が消え去ってしまう。
また当たり前の話だが「水タイプは物理型だけではない」ため、タイプを強く意識した場合の「おにび」は無駄になりやすい。
格闘タイプに有利なタイプがパーティ内に存在するのにもかかわらず、ロトムのHPを削って水タイプに突破される可能性を生み出すのは本末転倒。
水タイプのポケモンも格闘タイプと同様に、バンギラスとドリュウズに対して有利であるのだから。
また一方で物理型(格闘タイプ)を意識して採用するロトムの場合、水タイプに対して後出しすることは少なくなるなど、運用法に明確な差異が生み出される。
幅広い物理型を相手にする都合上、そもそも繰り出しと言うを行うようでは遅いため、初手にだして展開する必要が出てくるといったような事情である。
このようにポケモンの運用法と言うのは明確に何を意識して採用を下かで大きく変化する。
嘗て低レート帯では異様にこだわりスカーフ型ロトムが多い……と言われた時期もあったのだが(あくまでも体感的なものであり、真偽は不明)
それはこの「相性補完」という考え方が原因であると僕は考えている。
上級者と初心者
ある一定のラインを超えた上級者であるならば、「相性補完」からパーティを組んだとしても無意識のうちに直線的になりがちな構築の歪みを是正してしまうのだろうが、初心者のうちはこういった歪みや採用理由による差異を理解できず、修正をすることもできないため、「相性補完」を行えば行うほど、「相性補完しかできていない」ポケモンが増えていき、構築の歪みが大きくなってスタートとなるポケモンが抜けてしまう。
あくまでポケモンの対戦において重要なのは「特定のポケモンに勝てるのか?」という点である。
タイプバランスが優れた構築は相性補完がなされているように見えやすいが、それはあくまでも結果であり、「相性補完」を目的として生み出されたものではないと考える。
タイプバランスの良さはあくまでも結果であるからこそ、「特定のポケモンに勝てるのか?」を突き詰めた先に「砂パーティ(バンギラス+ドリュウズ)や「雨パーティ」のような
直線的な相性補完がなされていなように見える構築が生まれる。
上級者がこのように相性補完がなされておらずとも、タイプバランスに優れたパーティを実現しているのだから、初心者も相性補完がなされていないから、タイプバランスが悪いからと忌避感を持つ必要は無いのである。
相性補完とポケモン対戦論の未来
勿論「相性補完」という考え方がが全て誤りかと言うと、それも違う。
「相性補完」のみで考えると今回述べたような問題が発生してしまい、「相性補完」を完全否定し、僕の考え方だけを取り入れると特定のポケモンが辛くなりやすいと言う問題が発展する(事実鬼火ロトムは根性ローブシンを苦手とする)。
またそもそも「ポケモンに対して」行う対策は、深いポケモンの理解が求められるため初心者のうちは難しく、真の初心者にパーティの構築法を語るときには適さず、「相性補完」がもっともイメージを伝えやすい構築論であるというのは明確な事実だ。
今回の序文に置いて話した「貨幣通貨論」に代表される政治や経済と同様に、ポケモン対戦に置ける様々な構築論(今回の場合は相性補完)も正しい部分もあれば、間違っている部分もある。
何が正しいのかと言うのは何年、何十年か先の人たちが決めることではあるのだが……。
「話のネタ」の一つとして、この記事を覚えておいてもらえると僕にとって幸いである。
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コメント
コメント一覧 (8件)
タイプ相性と仮想敵を見るのは訳が違いますよね
某サイトのタイプバランスチェッカーで100点を取れば強いパーティになるのかという
面白い内容でしたが最初の例え話は無くても良かったような…
非常に分かりやすくて頷くしかない内容でしたが最初の商品貨幣論は要りませんね…
言いたいことはよくわかったけど商品貨幣論関係のくだり要る?
関係ある?って書いて消したつもりが残っちゃった
ポケモンの話はよかったけど、商品貨幣論とくいたんのせいで嫌味な記事になってますね…
喰い断さんって頭良いけどアホなんだなあって思いました(直球
環境に多いポケモンへ対応できるか、という論点でのパーティ構築は、役割論理でよくやったなぁ
「貨幣通貨論」と「構築の流れ」の内容がまさに直線的になっている高度な皮肉ですね